21 1月 2026, 水

動画運用の「AIファースト」化が進む——Google Gemini搭載プラットフォームから見る、メディア運用の未来と日本企業の機会

CES 2026において、動画プラットフォーム「Akta」がGoogleのGeminiを中核に据えた「AIファースト」な動画運用ソリューションを発表しました。単なるコンテンツ生成ではなく、動画の管理・処理・配信というオペレーションそのものをAIが自律的に最適化するこの動きは、マルチモーダルAIの実装が進む現在、日本企業にとっても重要な示唆を含んでいます。

動画プラットフォームは「配信」から「理解・最適化」のフェーズへ

CES 2026で注目を集めたAktaの発表は、動画プラットフォームの役割が大きく変わりつつあることを示しています。これまでの動画ソリューションは、いかに高品質な映像を遅延なく配信するかという「インフラ」としての側面が強調されてきました。しかし、Google Geminiのような高度なマルチモーダルAI(テキスト、画像、音声、動画を同時に理解・処理できるAI)が統合されることで、プラットフォーム自体がコンテンツの中身を深く理解し、運用を自動化するフェーズに入っています。

具体的には、動画内の文脈をAIが読み取り、メタデータの付与、チャプター作成、多言語字幕の生成、さらにはハイライトの抽出といった作業を、人間が介在することなく高精度に行えるようになります。これは「AI機能の追加」ではなく、システムの核(コア)にAIを据える「AIファースト」への転換を意味します。

日本企業における「動画×AI」の活用ポテンシャル

この技術トレンドは、放送・メディア業界だけでなく、社内研修動画、カスタマーサポート、ECの商品紹介など、動画資産を持つあらゆる日本企業に関係します。

日本では、少子高齢化による労働力不足が深刻化しており、動画編集やアーカイブ管理といった「時間のかかる作業」の省力化は急務です。熟練の担当者が手作業で行ってきたタグ付けや分類、不適切コンテンツのチェック(ブランドセーフティの確保)をAIが代替することで、属人化を解消し、業務効率を劇的に向上させる可能性があります。また、膨大な過去の動画資産(アーカイブ)をAIに再学習・整理させることで、新たな収益源やナレッジベースとして活用する「RAG(検索拡張生成)」的なアプローチも現実的になってきました。

導入におけるリスクと実務的な課題

一方で、こうした「AIファースト」なプラットフォームへの依存にはリスクも伴います。第一に、特定の巨大プラットフォーマー(この場合はGoogle)のエコシステムへのロックインです。基幹システムとAIモデルが密結合しすぎると、将来的なベンダー切り替えやコストコントロールが困難になる可能性があります。

第二に、AIの誤認識(ハルシネーション)や著作権の問題です。特に日本の商習慣では、権利関係やコンプライアンスに対して非常に厳格な姿勢が求められます。AIが自動生成した字幕や要約に誤りがあった場合や、権利処理が不明瞭な素材が混入した場合の責任分界点は、契約段階で明確にしておく必要があります。また、動画データの処理には膨大な計算リソースが必要となるため、従量課金によるコスト増大のリスクも、PoC(概念実証)の段階で慎重に見積もるべきでしょう。

日本企業のAI活用への示唆

今回の事例から、日本企業のリーダーや実務者が押さえるべきポイントは以下の3点です。

1. 「非構造化データ」の資産化を急ぐ
動画や音声といった非構造化データは、これまで検索や再利用が困難でした。しかし、マルチモーダルAIの進化により、これらはテキストと同等に扱える「資産」になります。動画データを単に保存するだけでなく、AIが読み取りやすい形で管理・統合するデータ基盤の整備が競争力の源泉となります。

2. 人間は「承認」と「クリエイティブ」に特化する
タグ付けやカット割りなどの「作業」はAIに任せ、人間は最終的な品質チェック(Human-in-the-loop)と、AIが生成した素材をどうビジネスに活かすかという企画・戦略にリソースを集中させる組織設計が必要です。

3. ガバナンスとコストのバランス感覚
高機能な海外製プラットフォームは魅力的ですが、日本の法規制(著作権法や個人情報保護法)やコスト感覚に適合するかを見極める必要があります。すべてをAI化するのではなく、「どこまでを自動化し、どこからを人が担うか」という線引きを、技術と現場の両面から判断できる人材(AIプロダクトマネージャーなど)の育成が不可欠です。

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