18 1月 2026, 日

ChatGPTが「17」を選ぶ理由:生成AIの「ランダム性」に潜む罠と実務での注意点

David Carlin氏の投稿をきっかけに、ChatGPTなどのLLMが真の「ランダム」を理解していないという事実が改めて注目されています。一見些細な挙動ですが、ここには生成AIの本質的な仕組みと、企業がAIをシステムに組み込む際に見落としがちな重大な示唆が含まれています。

「ランダムな数字」を生成できないAI

David Carlin氏のLinkedIn投稿は、ChatGPTに対して「ランダムな数字」を求めた際の挙動について指摘しています。多くのユーザーが経験しているように、AIに「1から100の間でランダムな数字を挙げて」と指示すると、「17」や「42」、「7」といった特定の数字が極めて高い頻度で出力される傾向があります。

これは単なる偶然ではありません。人間が「適当な数字」として思い浮かべやすい数字や、学習データに含まれる文献(例えば「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」としての42など)の統計的な偏りが、そのままAIの出力に反映されているのです。この現象は、大規模言語モデル(LLM)が決して「サイコロを振って」いるわけではなく、あくまで「過去のデータに基づいて、最も確率的にありそうな次の単語」を選んでいるに過ぎないことを如実に示しています。

確率的予測と論理演算の違い

日本の実務担当者がまず理解すべきは、LLMは「計算機」ではなく「確率的な文章生成機」であるという点です。コンピュータプログラムにおける乱数生成(擬似乱数)は、特定のアルゴリズムに基づいて行われますが、素のLLMにはその機能が備わっていません。「ランダム」という言葉の意味を文脈として理解していても、処理の実態は「ランダムに見える文章のパターン」を出力しているだけなのです。

この特性は、数字選びだけでなく、論理的推論や事実確認においても同様のリスクを孕んでいます。もっともらしい答え(ハルシネーション)を自信満々に返すのと同様に、ランダム性の欠如もまた、学習データの偏り(バイアス)による一種の模倣です。

ビジネス実装におけるリスクと対策

この「ランダム性の欠如」は、企業のAI活用において具体的にどのようなリスクとなるのでしょうか。

まず、セキュリティや公平性が求められる場面での利用は厳禁です。例えば、キャンペーンの当選者選定や、パスワードの初期値生成、サンプリング調査の対象抽出などにChatGPTをそのまま使えば、結果に偏りが生じ、公平性や安全性が損なわれます。

次に、正確な論理処理が必要なシステムへの組み込みです。日本の商習慣では、帳票処理や契約業務において厳密な整合性が求められます。LLM単体に計算や論理判定を任せきりにすると、前述の「17」のように、文脈上の「雰囲気」で誤った数値を返す可能性があります。

対策として有効なのは、LLMを「思考エンジン」として使いつつ、実際の計算や乱数生成は外部ツールに任せることです。OpenAIの「Code Interpreter(Advanced Data Analysis)」や、API経由での「Function Calling(関数呼び出し)」機能を活用し、Python等のプログラムコードを実行させて結果を得るアーキテクチャを採用することで、この問題は解決可能です。

日本企業のAI活用への示唆

今回の「数字の17」の事例から、日本企業が得るべき示唆は以下の3点です。

  • 適材適所の理解:LLMは「言語処理」には長けていますが、「論理演算」や「ランダム処理」は苦手です。AIにすべてを任せるのではなく、従来のプログラム処理とAIを組み合わせるハイブリッドな設計が不可欠です。
  • 検証(Evals)の重要性:「それっぽく動いている」で満足せず、エッジケース(極端な入力)や統計的な偏りをテストする評価プロセス(Evaluation)を開発フローに組み込む必要があります。特に品質に厳しい日本の顧客向けサービスでは、この工程が信頼性を左右します。
  • ガバナンスへの反映:社内のAI利用ガイドラインにおいて、「生成AIを計算機や乱数生成器として使用しない」といった具体的な禁止事項や注意喚起を盛り込むことが推奨されます。

AIの魔法のような側面に目を奪われず、その裏側にある統計的な仕組みを冷静に見極めることこそが、実務における成功の鍵となります。

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