9 2月 2026, 月

Google Gemini、月間7.5億ユーザー突破が示す「AIのインフラ化」と日本企業のプラットフォーム戦略

GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏は、同社のAIアプリ「Gemini」の月間アクティブユーザー数(MAU)が7億5000万人を突破したことを明らかにしました。このマイルストーンは、生成AIが実験的なツールから、OSや検索エンジンと同様の「デジタルインフラ」へと急速に進化していることを示唆しています。本稿では、このグローバルな普及状況を踏まえ、日本のビジネス環境において企業がどのようにAIプラットフォームを選定し、活用を進めるべきかを考察します。

モバイルとエコシステムが加速させる普及速度

月間7億5000万人という数字は、単一のAIサービスの普及速度として驚異的です。OpenAIのChatGPTが先行者利益を得て市場を切り開いた一方で、GoogleはAndroid OSやGoogle検索、Chromeブラウザといった既存の巨大なタッチポイントにGeminiを統合することで、一気にユーザー層を拡大させています。

特にスマートフォンにおけるAI統合は、PC中心の業務利用とは異なるユーザー体験を生み出しています。Android端末においてGoogleアシスタントがGeminiへと置き換わりつつある現状は、AIが「わざわざログインして使うツール」から「常に手元にあり、文脈を理解してサポートしてくれるOSの一部」へと変化していることを意味します。これは、現場業務や移動の多い日本のビジネスパーソンにとっても、アクセシビリティの面で大きな変化をもたらすでしょう。

Google Workspaceを利用する日本企業へのインパクト

日本国内、特にスタートアップやIT企業、一部の教育機関において、Google Workspaceの利用率は高いシェアを持っています。Geminiの普及は、これらの組織にとって業務フローの再設計を迫るものです。

Gmailでのメール下書き作成、Googleドキュメントでの要約、スプレッドシートでのデータ整理といった機能がAIとシームレスに連携することで、個別のAI SaaSツールを契約せずとも高度な自動化が可能になりつつあります。一方で、これはMicrosoft 365 Copilotを採用する企業との間で、使用するプラットフォームによる「AI体験の分断」が進むことも意味します。自社の主要なコミュニケーション基盤がGoogleなのかMicrosoftなのかによって、従業員が習得すべきAI操作の作法が異なってくる点は、IT部門や人材開発担当者が意識すべき重要なポイントです。

シャドーAIのリスクとエンタープライズ版の重要性

7.5億人という膨大なユーザー数は、裏を返せば「個人のGoogleアカウントで日常的にGeminiを利用している従業員が相当数存在する」可能性を示唆しています。日本企業において最も懸念されるのは、業務データを個人の無料版Geminiに入力してしまう「シャドーAI」のリスクです。

一般向けの無料版生成AIサービスの多くは、サービス改善のためにユーザーの入力データがモデルの再学習に利用される規約となっていることが一般的です。企業としては、単にAI利用を一律禁止するのではなく、Gemini for Google Workspaceなどのエンタープライズ契約を通じて、「入力データが学習利用されない安全な環境」を従業員に提供することが、現実的かつ効果的なセキュリティ対策となります。利用を抑圧するのではなく、安全な代替手段を提供することがガバナンスの基本です。

日本企業のAI活用への示唆

今回のGeminiのユーザー数拡大のニュースから、日本企業の意思決定者や実務担当者は以下の点に着目して戦略を練るべきです。

1. プラットフォーム戦略の明確化
AIツールを機能単体で評価するのではなく、自社が依存しているエコシステム(Google Workspace vs Microsoft 365)との親和性を最優先に評価してください。OSやオフィススイートに統合されたAIは、導入障壁が低く、社内への定着率が高くなる傾向にあります。

2. 「使うこと」はもはや差別化にならない
7.5億人が利用しているという事実は、AIによる文章作成や要約といった基本的なタスク処理能力がコモディティ化(一般化)していることを示します。競合他社も同じツールを使っている前提に立ち、自社独自のデータ(一次情報)をいかにAIに参照させ(RAGなど)、独自のアウトプットを出させるかが競争力の源泉となります。

3. モバイルワークフローの再構築
Geminiの強みであるモバイルOSとの統合を活かし、PCの前に座っていない現場作業や、移動の多い営業職などでのAI活用を検討してください。テキスト入力ではなく、音声対話やカメラ画像を使ったマルチモーダルな指示出しは、日本の現場力が高い産業において、DXを加速させる鍵となるでしょう。

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