対話型検索エンジンのPerplexityが、新たなAIエージェント機能「Computer」を発表し、自律型AIの競争領域に参入しました。従来の「情報を探すAI」から「PC操作を代行するAI」への進化は、日本のホワイトカラー業務にどのような変革をもたらすのか。セキュリティやガバナンスの観点も交えて解説します。
「検索」から「行動」へ:Perplexity Computerの衝撃
生成AI市場における競争軸が、急速に「チャットボット」から「自律型エージェント」へと移行しています。2026年2月、AI検索エンジンの雄であるPerplexityが発表した「Computer」は、単なる質問応答システムではなく、ユーザーに代わって複雑なタスクを完遂することを目的としたマネージドAIエージェントです。
これまでPerplexityは、RAG(検索拡張生成)技術を駆使し、「正確な情報ソース付きの回答」を提供することでGoogle検索の代替としての地位を築いてきました。しかし、今回発表された機能は、その先のステップである「Action(行動)」に踏み込んでいます。競合であるOpenAI(記事中ではOpenClawと表現)やAnthropicなどが進める「Computer Use(AIによるコンピュータ操作)」の領域に、Perplexityならではの検索能力を統合して参入した形です。
「PCを操作するAI」がもたらす業務変革
「Computer」のような自律型エージェントの本質は、ブラウザやアプリケーションを人間に代わって操作できる点にあります。これまでの生成AIは「メールの文案を作る」ところまでが仕事でしたが、エージェント型AIは「文案を作り、メーラーを開き、宛先を入力して送信ボタンを押す」ところまでを担います。
日本企業、特にバックオフィス業務においては、複数のSaaSや社内システムを行き来する作業(情報の転記、精算処理、日程調整など)が依然として多く残っています。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は定型業務には強いものの、ルールの変更や非定型な判断には弱いという課題がありました。Perplexityの「Computer」のようなAIエージェントは、Web検索で最新情報を補完しながら、こうした非定型業務を柔軟に遂行する「デジタル社員」としての役割が期待されます。
日本企業が直面するリスクとガバナンス
一方で、AIに「操作権限」を与えることには大きなリスクも伴います。特に、セキュリティ意識が高く、失敗への許容度が低い日本の組織文化において、以下の点は導入の障壁となるでしょう。
まず、「誤動作(ハルシネーション)による事故」のリスクです。AIが誤った情報を回答するだけでなく、誤ったファイルを削除したり、誤った相手に機密情報を送信したりする可能性があります。Perplexityは検索精度に定評がありますが、行動の精度が100%保証されるわけではありません。
次に、「責任の所在」です。AIエージェントが契約ボタンを押した場合、その法的効力や責任はどうなるのか。日本の商習慣や法規制において、完全な自律動作を認めるには、まだ多くの議論が必要です。
日本企業のAI活用への示唆
Perplexityのこの動きは、今後のAI活用が「情報の抽出」から「業務の代行」へシフトすることを決定づけています。日本の経営層や実務担当者は、以下の3点を意識して向き合うべきです。
- 「検索」と「代行」の分離と統合:
まずは情報収集(リサーチ)業務においてPerplexityのようなツールを活用し、信頼性を確認した上で、徐々にアクション(予約、購入、申請など)を任せるという段階的な導入が現実的です。いきなり全権限を与えるのではなく、人間が最終確認を行う「Human-in-the-loop」のプロセスを設計してください。 - SaaS連携を見据えた環境整備:
AIエージェントはAPIやブラウザ経由で各種ツールを操作します。自社の業務フローがアナログ(紙やハンコ、電話)のままでは、最新のAIエージェントの恩恵を受けられません。AI活用を見据えた業務のデジタル化・SaaS化が前提条件となります。 - シャドーAIへの対策:
便利なエージェント機能は、現場の判断で勝手に導入されがちです(シャドーAI)。「使用禁止」にするのではなく、セキュアなサンドボックス環境(隔離された検証環境)を用意し、安全に試せるルールを策定することが、技術の恩恵を享受しつつリスクを管理する鍵となります。
