20 2月 2026, 金

マルチモーダルAIが直面する「機能過多」の壁とUI/UXの重要性:Google Geminiの最新アップデートから学ぶ

Googleの生成AI「Gemini」のAndroidアプリ版において、添付ファイルメニューのUI改修がテストされていることが明らかになりました。この変更は単なるデザイン変更にとどまらず、AIモデルが多機能化(マルチモーダル化)する中で、いかにユーザーにその機能を認知させ、使いこなしてもらうかという、AIプロダクト開発における普遍的な課題を浮き彫りにしています。

GeminiのUI刷新が示唆する「機能過多」への対応

Android Authority等の報道によると、Googleは現在、モバイル版Geminiアプリのファイル添付メニュー(Attachment sheet)の刷新を検討しています。APK(Androidアプリのパッケージファイル)の解析によって判明したこの変更案では、これまで画面上にアイコンが羅列されていたインターフェースを見直し、スクロール可能なリスト形式への変更がテストされています。

この変更の背景にあるのは、明らかな「機能過多(Feature Overload)」の問題です。当初はテキストチャットが中心だった生成AIですが、現在では画像認識、ドキュメント(PDFなど)の読み込み、位置情報の活用、YouTube動画の解析など、入力可能なデータ形式(モダリティ)が急速に拡大しています。限られた画面スペースに全ての機能アイコンを並べる従来のアプローチでは、視認性が低下し、ユーザーが「何ができるのか」を直感的に把握できなくなりつつあります。

マルチモーダル化と「認知的負荷」のジレンマ

この事例は、Google一社の問題ではなく、AIプロダクトを開発・導入するすべての企業が直面する課題を象徴しています。大規模言語モデル(LLM)の進化により、AIは単なる「対話相手」から、資料を読み込ませて分析させたり、画像を生成させたりする「多機能ワークステーション」へと進化しました。

しかし、機能が増えることは、ユーザーの「認知的負荷(Cognitive Load)」の増大を意味します。特に日本企業が社内向けに開発するAIツールやチャットボット(RAGシステム等を含む)において、開発側は「あれもこれもできる」と機能を詰め込みがちですが、エンドユーザーである社員からすると「どのボタンを押せばいいかわからない」「機能が多すぎて使いこなせない」という事態に陥りやすく、これが社内浸透を阻害する大きな要因となります。

日本企業のAI活用への示唆

Googleが試行錯誤するUIの改善プロセスは、日本企業がAIを業務に組み込む際、または自社サービスとしてAIプロダクトを提供する際に、以下の重要な示唆を与えています。

1. モデルの性能以上に「UI/UX」が利用率を左右する
どれほど高性能なLLMを採用していても、ユーザーインターフェース(UI)が複雑であれば現場では使われません。特に日本の業務システムは画面が複雑化する傾向にありますが、AIツールに関しては「機能を隠す勇気」や「コンテキストに応じた機能提示」など、シンプルさを維持する設計思想が不可欠です。

2. モバイル・現場利用を見据えた設計
今回のGeminiの改修はモバイル版での視認性向上を目的としています。日本国内でも、営業職や建設・製造現場など、デスクレスワーカーのAI活用ニーズが高まっています。PC画面を前提とした設計ではなく、スマートフォンやタブレットの限られた画面領域で、ストレスなくファイルアップロードや指示出しができる操作性が求められます。

3. 継続的なUIの「リファクタリング」
AIの機能は日進月歩で追加されます。一度作った画面で固定するのではなく、機能追加に合わせてUIを柔軟に見直す(リファクタリングする)プロセスを開発サイクルに組み込む必要があります。Googleのようなテックジャイアントであっても、UIは常に実験と修正の繰り返しであるという事実は、我々のAI開発においても重要な教訓となります。

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