2025年に向けて研究と言及が急増している「AIエージェント(Agentic AI)」。従来のチャットボットとは異なり、自律的にタスクを遂行するこの技術は、業務効率化の切り札として期待される一方、その安全策(ガードレール)の整備が追いついていない現状が指摘されています。本稿では、最新の調査結果をもとに、AIエージェントのリスクと、日本企業がとるべき現実的な対策について解説します。
AIエージェントへの注目と「自律性」のインパクト
近年、生成AIの話題は「対話型AI(チャットボット)」から「AIエージェント(Agentic AI)」へと急速にシフトしています。Gizmodoが取り上げた最新の調査によると、2025年における「AI Agent」や「Agentic AI」に関する研究論文の数は、2020年から2024年の合計数の2倍以上に達すると予測されており、マッキンゼーの調査でも企業の関心が極めて高いことが示されています。
従来のLLM(大規模言語モデル)が、ユーザーの指示に対してテキストや画像で「回答」を生成するのに対し、AIエージェントは自ら計画を立て、Web検索、API連携、コード実行などを通じて「行動」し、タスクを完遂しようとします。日本国内でも、単なる社内検索(RAG)にとどまらず、経費精算の自動化やカスタマーサポートの自律対応など、具体的な業務プロセスへの組み込みを模索する企業が増えています。
「Running Wild」:ガードレールなき自律動作のリスク
しかし、技術の進化に対し、安全性を担保する仕組み(ガードレール)の整備は遅れています。元記事で「Running Wild(制御不能な状態、野放し)」と表現されているように、現在のAIエージェントの多くは、十分な監視機能を持たないままオンライン上で活動可能な状態にあります。
最大の問題は、AIが「間違ったことを言う(ハルシネーション)」リスクから、「間違ったことをする」リスクへと変化している点です。例えば、自律型エージェントが誤った判断で不適切な商品を大量発注したり、社内の機密データを外部サーバーへ送信したり、顧客に対して不適切なアクションを自動実行したりする可能性があります。
現在主流のLLM向けガードレールは、主に「有害な発言のフィルタリング」に焦点を当てており、エージェントが複雑なツールを使用した際に発生する「行動の副作用」や「論理的なループ」を防ぐ仕組みはまだ発展途上です。特に商習慣やコンプライアンスを重視する日本企業において、この制御不能なリスクは導入の大きな障壁となります。
日本企業のAI活用への示唆
急速に広がるAIエージェントの波に対し、品質と信頼を重んじる日本企業はどのように向き合うべきでしょうか。以下に実務的なポイントを整理します。
1. Human-in-the-loop(人間参加型)の徹底
現段階のAIエージェントを、完全に自律した状態で顧客接点などの「外部」に晒すことはリスクが高すぎます。まずは社内業務などの「内部」から適用を始め、重要な意思決定やアクションの最終段階には必ず人間が確認・承認を行うフロー(Human-in-the-loop)を設計に組み込むことが不可欠です。
2. 「発言」だけでなく「行動」のガバナンス策定
従来のAIガイドラインは「情報の取り扱い」が中心でしたが、今後は「AIにどのような権限(ツールの実行権限)を与えるか」というアクセス制御の観点が必要です。APIの実行権限を読み取り専用(Read-only)に限定する、あるいはサンドボックス環境内でのみ動作させるなど、システムアーキテクチャレベルでの制約が求められます。
3. 期待値コントロールと段階的な導入
「AIが全自動で仕事をしてくれる」という過度な期待は、現場の失望や無謀なプロジェクト計画を招きます。まずは「人間の作業を支援する副操縦士(Copilot)」としての位置づけを崩さず、特定のエラーが発生した際には即座に停止できるキルスイッチ(緊急停止機能)を用意するなど、安全性を最優先したスモールスタートが、結果として持続可能なDXにつながります。
