12 2月 2026, 木

中国Zhipu AIが「GLM-5」を発表:Huawei製チップのみで学習された大規模モデルが示唆する、AIインフラとエコシステムの分断

中国の主要AI企業であるZhipu AI(智譜AI)が、最新の大規模言語モデル(LLM)「GLM-5」を発表しました。7,450億パラメータという巨大な規模もさることながら、このモデルが米国NVIDIA製のGPUに依存せず、Huawei製のAIチップのみを用いて学習された点は、世界のAI産業における地政学的な転換点を示唆しています。

米国規制下での技術的ブレイクスルー

Zhipu AIによる「GLM-5」の発表は、単なる新モデルのリリース以上の意味を持ちます。米国の輸出規制により、中国企業はH100やA100といったNVIDIA製の最先端GPUを入手することが困難な状況にあります。そのような環境下で、Huawei(ファーウェイ)製のAIアクセラレータ(Ascendシリーズ等と推測されます)のみを用いて、7,450億パラメータというGPT-4クラスに匹敵する規模のモデル学習を完遂したことは、中国国内のエコシステムが「自立」し始めていることを技術的に実証したと言えます。

これまでの生成AI開発競争において、「計算資源=NVIDIA」という図式は絶対的なものでした。しかし、GLM-5の事例は、ハードウェアとソフトウェアの統合的なチューニングがあれば、代替チップでもSOTA(State-of-the-Art:最先端)レベルの開発が可能であることを示しています。

分断されるAIエコシステムと日本企業への影響

このニュースは、世界のAIエコシステムが「米国中心のNVIDIA経済圏」と「中国独自の国産チップ経済圏」に明確に分断されつつあることを浮き彫りにしています。これは日本企業にとっても対岸の火事ではありません。

日本企業がグローバルにビジネスを展開する場合、特に中国市場向けのサービス開発においては、この「二つの世界」を意識する必要があります。中国国内ではOpenAIやGoogleのサービスが利用できないため、現地でのAI活用にはZhipu AIのような現地ベンダーのモデル(GLMシリーズ等)を採用することが現実的な選択肢となります。一方で、日米欧では引き続き米国製モデルが主流となるため、地域によって使用するLLMやインフラを使い分ける「マルチLLM戦略」が求められます。

オープンソースとしての価値と実用上の課題

記事によれば、GLM-5はオープンソースとして位置づけられています。7,000億パラメータ超のモデルが公開されることは研究開発において大きな意義がありますが、実務的な観点からは注意が必要です。この規模のモデルを自社で推論・ファインチューニング(追加学習)するには、極めて大規模な計算リソースが必要となります。

日本のエンジニアやプロダクト担当者は、「オープンソースだからすぐに使える」と飛びつくのではなく、それを動かすためのインフラコストや、推論速度(レイテンシ)の実用性を冷静に評価する必要があります。また、中国発のモデルを利用する場合、学習データに含まれるバイアスや、日本の経済安全保障推進法に基づくサプライチェーンリスク、データガバナンスの観点からの精査も不可欠です。

日本企業のAI活用への示唆

今回のZhipu AIの発表から、日本の経営層・実務者が汲み取るべきポイントは以下の通りです。

  • ハードウェア依存リスクの再認識:NVIDIA一強の状態は供給リスクを伴います。日本国内でも計算資源確保の動き(GENIAC等)が進んでいますが、世界の潮流として「非NVIDIA」の選択肢が技術的に成熟しつつあることを注視すべきです。
  • 中国市場におけるAI戦略の転換:中国事業を持つ日本企業は、現地でのAI活用において「現地のハード・現地のモデル」への適応を迫られる可能性があります。グローバル統一のAI基盤だけでなく、ローカル環境に適応した柔軟なアーキテクチャが必要です。
  • 経済安全保障とガバナンス:中国製モデルの性能は高いものの、それを日本国内の機微なデータ処理に利用することには慎重であるべきです。利用目的を「翻訳」や「一般的なコード生成」などに限定するか、あるいは完全に分離した環境で検証するなど、セキュリティポリシーに基づいた運用が求められます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です