18 1月 2026, 日

激化する米中AI覇権争いと2025年の総括:分断されるエコシステムの中で日本企業が取るべき戦略

習近平国家主席が2025年を「AIと半導体のブレイクスルーの年」と総括したことは、米中技術デカップリングの決定的な進行を意味します。汎用AIエージェントの進化とハードウェアの自給自足が進む中国の動向を踏まえ、グローバルな分断の中で日本企業が直面するリスクと、2026年に向けて準備すべき実務的対応について解説します。

米中「並行進化」の時代へ

2025年、習近平国家主席は米国との激しい技術競争の中で、AIと半導体分野における「ブレイクスルー」を強調しました。これは単なる政治的なアピールにとどまらず、生成AIおよびその基盤となるハードウェア(半導体)において、中国が独自のサプライチェーンとエコシステムを確立しつつあることを示唆しています。

これまで世界のAI開発は、OpenAIやGoogle、NVIDIAを中心とした米国企業がリードする「一極集中」の様相を呈していました。しかし、米国の輸出規制に対抗する形で、中国国内では独自のAIモデル開発と、それを支えるチップの国産化が急速に進んでいます。これにより、世界は米国を中心とする西側諸国のAIエコシステムと、中国独自のAIエコシステムという、互換性の低い2つの世界へと分断(デカップリング)されつつあります。

「チャット」から「エージェント」への進化

元記事でも言及されている通り、注目すべき技術トレンドの一つが「汎用AIエージェント(General-purpose AI agent)」の実用化です。これまでの生成AIは、人間がプロンプト(指示)を入力して答えを得る「チャットボット」形式が主流でした。しかし、最新のトレンドは、AIが自律的にタスクを計画し、コーディング、リサーチ、外部ツールの操作などを完遂する「エージェント型」へとシフトしています。

中国企業が研究やコーディングに特化したエージェントを投入している事実は、AIが単なる「補助ツール」から「実務の代行者」へと進化していることを意味します。これは日本国内の文脈においても、深刻な人手不足を解消する切り札として期待されますが、同時に「AIが勝手に判断・実行した結果」に対する責任論やガバナンスの問題をより複雑にします。

日本企業にとっての「地政学リスク」と「サプライチェーン」

日本企業、特にグローバルに展開する製造業や商社にとって、この米中の分断は極めて実務的な課題を突きつけます。

第一に、AIモデルの選定とガバナンスです。日本の本社では米国のLLM(大規模言語モデル)を採用していても、中国拠点では規制やネットワークの壁によりそれらが使用できない、あるいは使用すべきでないケースが増えています。中国国内では中国政府の認可を受けたモデルを使用せざるを得ず、結果としてグローバルでのAIガバナンス統一が困難になります。

第二に、半導体供給のリスクです。AI開発・運用に不可欠なGPUなどの計算資源は、地政学的な緊張によって供給が不安定になる可能性があります。クラウド経由でAPIを利用する場合でも、背後のインフラがどのリージョンにあり、どの法規制の影響を受けるかを確認することは、BCP(事業継続計画)の観点から必須となりつつあります。

日本企業のAI活用への示唆

以上の動向を踏まえ、日本の経営層およびAI実務者は以下の3点を意識して戦略を構築する必要があります。

1. グローバル・データガバナンスの再設計

「とりあえず便利なモデルを使う」段階から、展開する国や地域の法規制(欧州AI法、中国の生成AI規制など)に応じたモデルの使い分け(オーケストレーション)が求められます。特に中国拠点を持つ企業は、現地のデータが現地のモデルで処理される際のセキュリティとコンプライアンスを厳格に評価し、本社とは異なる運用ルールを策定する必要があります。

2. エージェント型AIへの備えと業務プロセスの見直し

2026年に向けて、AIは「対話」から「自律実行」へ進化します。日本企業が得意とする「現場のすり合わせ」や「暗黙知」を、AIエージェントが理解できる形式知(明確なワークフローや評価基準)に落とし込む準備が必要です。AIにコードを書かせたり、調査をさせたりする場合、その成果物を人間がどう検証するかという「品質管理プロセス」の確立が急務です。

3. 「ソブリンAI」とマルチモデル戦略の検討

特定の海外ベンダーに依存しすぎることは、為替リスクや地政学リスクに直結します。OpenAIやGoogleなどの汎用モデルだけでなく、日本の商習慣や日本語のニュアンスに強い国産モデル(NTT、ソフトバンク、あるいはスタートアップ発のモデルなど)や、オープンソースモデルを適材適所で組み合わせる「マルチモデル戦略」を持つことが、長期的な競争力とリスクヘッジにつながります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です