17 1月 2026, 土

2026年を見据えたAI実務の転換点:RPAの「エージェント化」と開発プロセスの高度化

生成AIのブームが一巡し、2026年に向けて市場は「実用と成果」のフェーズへと移行しつつあります。本稿では、米国市場で再注目されているUiPathとGitLabの動向を端緒に、日本企業が直面する「自動化の壁」と「開発効率化の本質」について解説します。

RPAから「AIエージェント・オーケストレーション」への進化

かつて日本企業の間で爆発的に普及したRPA(Robotic Process Automation)ですが、多くの現場が「複雑な判断を要する業務の自動化」や「頻繁なUI変更によるロボットの停止」といった課題に直面しています。これまでのRPAは、人間が決めたルール通りに動く「手足」に過ぎませんでした。

しかし、UiPathなどの主要プレイヤーがいま注力しているのが、生成AI(LLM)を組み合わせた「AIエージェント・オーケストレーション」です。これは、AIが単にテキストを生成するだけでなく、画面上の情報を読み取り、推論し、複数のアプリケーションを操作してタスクを完遂する「自律型エージェント」を統合管理(オーケストレーション)する構想です。

日本企業にとって、これは「定型業務の自動化」から「非定型業務の自律化」へのシフトを意味します。例えば、請求書の突合や顧客からの問い合わせ対応など、これまで人間が介在しなければならなかった「判断」のプロセスをAIエージェントに委譲できる可能性が広がります。ただし、自律性が高まる分、AIが誤った操作を行わないためのガバナンス機能が、従来のRPA以上に重要となります。

生成AI時代のDevSecOpsと開発者体験

一方、ソフトウェア開発の領域でも、AIの活用は「コード補完」の枠を超えようとしています。GitLabのような統合プラットフォームが目指しているのは、要件定義からコーディング、セキュリティテスト、デプロイに至るまでのライフサイクル全体へのAI統合です。

多くの日本企業では、開発効率化のために「GitHub Copilot」などのコーディング支援ツールを導入し始めていますが、開発プロセス全体で見ると、コードを書く時間は一部に過ぎません。セキュリティレビューやドキュメント作成、テスト自動化といった周辺業務のボトルネック解消こそが、デリバリ速度(Time to Market)を短縮する鍵となります。

特に「DevSecOps(開発・セキュリティ・運用の統合)」の文脈では、AIが脆弱性を早期に検出し、修正案を提示することで、リリース直前の手戻りを防ぐ役割が期待されています。ベンダーロックインのリスクを考慮しつつも、単一のツールではなく、開発パイプライン全体をAIで強化する視点が必要です。

日本企業のAI活用への示唆

以上の動向を踏まえ、日本のビジネスリーダーやエンジニアは以下の3点を意識して戦略を練るべきです。

1. 「塩漬けRPA」のモダナイゼーション

過去に導入したRPAが保守コストの増大で「負の遺産」になっていないでしょうか。今後は、従来のルールベース型RPAと、LLMベースのAIエージェントを組み合わせるハイブリッドな運用が求められます。既存の自動化資産を活かしつつ、判断プロセスをAIに置き換えるPoC(概念実証)を検討すべき時期に来ています。

2. ガバナンスを前提とした自律化

AIエージェントがシステムを操作する場合、その権限管理と監査ログは極めて重要です。日本の商習慣上、最終的な承認プロセスや責任の所在は厳格です。「AIが勝手にやった」では済まされないため、人間が監督する「Human-in-the-loop」の設計をシステムレベルで組み込むことが必須です。

3. 開発者体験(DevEx)への投資

AIによる開発支援は、エンジニア不足に悩む日本企業にとって福音です。しかし、単にツールを導入するだけでは効果は限定的です。開発者がAIを安全かつ効果的に使えるよう、社内のセキュリティガイドラインを整備し、DevSecOpsのプロセス自体を見直すことが、結果として競争力のあるプロダクト開発につながります。

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