19 1月 2026, 月

GoogleがディズニーキャラクターのAI生成動画を削除へ:生成AIと知的財産権リスクの最前線

Googleがディズニーからの差止請求(Cease and Desist)を受け、同社のキャラクターを含むAI生成動画への対応を行いました。この事例は、生成AIの技術的進歩と強力な知的財産権(IP)との衝突を象徴するものであり、AI活用を進める日本企業にとっても、コンプライアンスやリスク管理の観点から重要な示唆を含んでいます。

Googleによる動画削除の背景と事実関係

報道によると、Googleはディズニーからの差止請求書(Cease and Desist letter)を受領した後、ディズニーキャラクターを含むAI生成動画の削除に応じました。具体的なツール名やプラットフォームの詳細は報じられていませんが、Googleが提供する動画生成AIモデルや、それを利用したコンテンツ共有の場において、著作権侵害の懸念があるコンテンツへの対策が講じられたものと考えられます。

生成AI、特に動画生成モデルの進化により、誰でも容易に有名キャラクターを模した高品質なコンテンツを作成できるようになりました。しかし、ディズニーのように知的財産(IP)保護に厳格な企業が法的措置を示唆したことで、プラットフォーマーであるGoogle側が迅速にリスク回避に動いたという図式です。これは、AIベンダーやプラットフォーマーが「技術の提供者」としての立場を超え、生成されるコンテンツの権利侵害リスクに対して、より積極的な管理責任を問われ始めていることを示しています。

「技術的に可能」と「法的に適法」のギャップ

今回の事例は、企業が生成AIを利用する際に陥りやすい落とし穴を浮き彫りにしています。それは、「プロンプト(指示文)を入力すれば生成できてしまう」という技術的な可能性と、「それを生成・公開してもよいか」という法的な適法性は全く別問題であるということです。

日本の著作権法(第30条の4)は、AIの学習(開発段階)に関しては世界的に見ても柔軟な規定を持っていますが、生成・利用段階(依拠性と類似性が認められる場合)においては、通常の著作権侵害と同様に扱われます。つまり、日本国内であっても、特定のキャラクターを意図的に生成し、それを公開したり商用利用したりすることは権利侵害となるリスクが高いのです。

特に画像や動画生成においては、ユーザーが悪意なく「○○風のキャラクター」と指示した場合でも、学習データに含まれる強力なIPの特徴が色濃く反映されることがあります。これをそのまま広告やプロダクトに使用すれば、企業は深刻なレピュテーションリスクや訴訟リスクを負うことになります。

日本企業のAI活用への示唆

今回のGoogleとディズニーの件を踏まえ、日本企業は以下のポイントを再確認し、実務に反映させる必要があります。

1. 生成物の著作権侵害リスクへの感度を高める
マーケティング部門や制作現場に対し、生成AIツールを使用する際のガイドラインを徹底する必要があります。「特定の作家、キャラクター、ブランド名をプロンプトに含めない」「生成された画像が既存の著作物に類似していないか、必ず人の目で確認する(類似性調査)」といったプロセスを業務フローに組み込むことが重要です。

2. プラットフォーマー側の規約変更とガードレールへの対応
GoogleなどのAIプロバイダーは、今回のように権利者からの要請を受けて、特定のキーワード入力をブロックしたり、生成を拒否したりする「ガードレール(安全対策)」を強化していくと予想されます。企業が自社プロダクトに生成AI APIを組み込んでいる場合、こうしたプロバイダー側の仕様変更により、突如として特定の出力が得られなくなる可能性があります。依存度が高い機能については、代替手段やリスクヘッジを検討しておくべきでしょう。

3. 従業員へのリテラシー教育と「権利の尊重」
「AIで作ったから大丈夫」という誤解は現場レベルで依然として根強く残っています。特に日本はアニメやマンガなどのコンテンツ大国であり、IPビジネスの重要性は極めて高い市場です。他者の知的財産を尊重することは、自社のブランドを守ることにも繋がります。ツールに依存しすぎず、最終的な責任は人間(企業)にあるという原則を、組織文化として定着させることが求められます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です