FunkyMEDIAが創業15周年を機に、従来のSEOからLLM(大規模言語モデル)主導の回答やAIレコメンデーションへ戦略を転換したことは、デジタルマーケティング業界における象徴的な動きと言えます。生成AIの普及により、企業が顧客に情報を届ける手段は、「検索順位の獲得」から「AIによる信頼性の高い引用」へと急速にシフトしつつあります。
「検索順位とクリック」から「AIによる回答」へ
フランスを拠点とするFunkyMEDIAの事例は、検索エンジン最適化(SEO)の概念が根本から変わりつつあることを示しています。これまで企業はGoogleなどの検索エンジン上で上位表示され、ユーザーにクリックされることを主眼に置いてきました。しかし、ChatGPTやPerplexity、GoogleのAI Overviews(旧SGE)の台頭により、ユーザー行動は「リンクを選んで情報を探す」形から「AIに質問して直接的な回答を得る」形へと変化しています。
元記事にある「LLM-powered answers(LLM駆動型の回答)」への注力とは、単にキーワードを埋め込むのではなく、AIが生成する回答の中で、自社のブランドや製品が「信頼できる情報源」や「推奨される選択肢」として引用されることを目指す戦略(いわゆるGEO:Generative Engine Optimization)を指します。
AIレコメンデーションエンジンの影響力
AI時代のマーケティングにおいて重要になるのが、レコメンデーションの質です。従来の検索エンジンは関連性の高い「ウェブページ」を提示していましたが、現在のAIエージェントや高度なレコメンデーションエンジンは、ユーザーの文脈を理解した上で具体的な「解決策」を提示します。
例えば、BtoBのSaaS選定において、担当者がAIに「日本の中堅企業に適した経費精算システムは?」と尋ねた際、AIはその特徴や評判を要約して提示します。ここでAIの学習データや参照ソースに、自社の強みやユースケースが正確に認識されていなければ、そもそも検討の土俵に上がれないリスクが生じます。これは、従来の広告枠の購入や被リンク対策だけでは対応できない領域です。
日本市場における「ゼロクリック」時代の到来とリスク
日本国内でも、若年層やエンジニア層を中心に、検索エンジンよりも生成AIを情報収集の第一歩とする動きが広がっています。この変化は、企業のオウンドメディアへの流入数が減少する「ゼロクリック」現象を引き起こす可能性があります。ユーザーはAIの回答だけで満足し、わざわざ企業のサイトを訪問しなくなるからです。
また、AIが誤った情報を生成する「ハルシネーション」のリスクも無視できません。自社のブランドについてAIが不正確な説明を生成している場合、それがそのままユーザーの認識として定着してしまう恐れがあります。したがって、企業はAIに対して「いかに正しく自社を理解させるか」というガバナンスと情報発信の管理が求められます。
日本企業のAI活用への示唆
今回のFunkyMEDIAの戦略転換は、日本の企業にとっても対岸の火事ではありません。今後のマーケティングおよび情報発信戦略において、以下の点を考慮すべきです。
1. コンテンツの構造化と事実の整備
AIが自社の情報を正しく学習・参照できるよう、ウェブサイト上の情報を構造化データ(Schema.orgなど)を用いて整理し、曖昧さを排除した事実ベースのコンテンツを増やす必要があります。これは「人間にとっての読みやすさ」に加え、「AIにとっての読みやすさ」を意識することを意味します。
2. 「一次情報」の発信強化
AIは既存の情報の「要約」は得意ですが、新しい事実の創出はできません。日本企業が持つ現場の深い知見、独自のデータ、具体的な事例などの「一次情報」は、AIが回答を生成する際の根拠として引用される可能性が高く、ブランドの信頼性向上に直結します。
3. AIモニタリングの導入
自社ブランドや製品が、主要なLLM(ChatGPT、Gemini、Claudeなど)でどのように語られているかを定期的に確認するプロセスを組み込むべきです。誤った情報が出力される場合は、公式サイトでの情報更新やプレスリリースを通じて、正しい情報をAIの検索ソース(Web)に流通させる対策が必要です。
