17 1月 2026, 土

生成AIによる「不適切なコンテンツ」の拡散と、企業が直面するブランド毀損・法的リスク

CNNの報道によると、TikTokなどのプラットフォーム上で、生成AIを用いて作成された未成年者を想起させる性的・暗示的な動画が大量の「いいね」を集め、問題視されています。この事例は、生成AIの技術的進歩がもたらす「影」の部分を浮き彫りにすると同時に、AIを活用する企業にとって、コンテンツ・モデレーション(投稿監視)とブランドセーフティの重要性を突きつけるものです。

生成AIの民主化が招いた「倫理的リスク」の増大

画像生成AIや動画生成AIの急速な進化により、専門的なスキルを持たないユーザーでも、極めて写実的な人物映像を作成できるようになりました。今回の報道にあるように、実在しない「AI生成の子ども」を用いた性的、あるいはそれに準ずる不適切なコンテンツが生成され、ソーシャルメディア上で拡散されている現状は、技術の悪用(Malicious Use)の典型例と言えます。

これまでのディープフェイク技術は、著名人などの顔を合成する手法が主流でしたが、最新の生成AIは「実在しない人物」をゼロから創り出します。これにより、従来の肖像権侵害の枠組みでは捉えきれない、新たな倫理的・法的課題が浮上しています。

プラットフォームの責任とアルゴリズムの限界

問題の本質は、生成の容易さだけではありません。多くのソーシャルメディアが採用しているレコメンデーション(推奨)アルゴリズムが、ユーザーの滞在時間を延ばすために、こうしたセンセーショナルなコンテンツを自動的に拡散してしまう点にあります。

プラットフォーム側もAIによる自動検知や人間によるモデレーション(監視)を強化していますが、生成AIによるコンテンツは従来のスパムや違法画像の特徴とは異なる場合があり、すり抜けが発生しています。これは、自社サービスにコミュニティ機能や画像投稿機能を持つ日本企業にとっても、対岸の火事ではありません。

日本の法規制と企業倫理の境界線

日本国内において、児童ポルノ禁止法は実在する児童を対象としていますが、AI生成物(非実在児童)に関する法的扱いは議論の過渡期にあります。しかし、法律で明示的に禁止されていないからといって、企業がリスクを無視できるわけではありません。

昨今の「AIガバナンス」の潮流において、企業には法令順守以上の倫理観が求められます。特に日本社会においては、企業の社会的責任(CSR)やコンプライアンスに対する世間の目は厳しく、一度「不適切なAI活用」や「管理体制の不備」が露見すれば、深刻な炎上(評判リスク)を招く恐れがあります。

日本企業のAI活用への示唆

今回の事例を踏まえ、日本国内でAI活用やデジタルサービスを展開する企業は、以下の点に留意する必要があります。

1. 生成AI利用時のガードレール構築
自社のマーケティングやプロダクト開発で画像生成AIを利用する場合、意図せず不適切な画像が生成されないよう、プロンプト(指示文)の制御や、出力結果に対するフィルタリング機能(ガードレール)の実装が不可欠です。特に人物画像を生成する際は、年齢や服装、ポーズに関する厳格なチェック体制が必要です。

2. 広告出稿におけるブランドセーフティの確保
自社の広告が、今回のような不適切なAI生成コンテンツの隣に表示されることは、深刻なブランド毀損につながります。アドベリフィケーション(広告掲載面の品質確認)ツールを活用し、AI生成による低品質・不適切なコンテンツが氾濫するプレースメントを除外する設定を徹底すべきです。

3. AIガバナンス規定の策定と更新
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」等を参考に、自社のAI倫理規定を見直す時期に来ています。「法的に問題ないか」だけでなく、「人権や児童保護の観点から社会的受容性があるか」を判断基準に据えることが、持続可能なAI活用への第一歩となります。

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